海外生産拠点と日本をつなぐ基幹システム

海外拠点の生産管理をクラウドで一元化、
今後のビジネスの可能性が広がりました。

Access & Azure 活用

  • 基幹システムを低コストに構築
  • 海外拠点をクラウドで管理
靴下メーカーY社様

Access & Azure 活用で、ベトナムの生産拠点と日本をつなぐ基幹システムを低コストに構築。
製造から出荷、精算までを国内から一元管理して、ビジネス成長を加速

靴下の製造で確固たる実績を誇るY社様は、2005年にベトナムに子会社を設立するなど、競争力の確保に努力を続けてきました。しかし、ベトナムの受注量が右肩上がりの成長を始めると、生産管理をめぐってさまざまな課題が表出。
この課題を解決したのが、クラウド、Access、そしてAzureを活用したA-ZiPのシステムでした。


日本企業の先駆けとしてベトナムに進出
困難を極める海外拠点の生産管理

Y社様は1971年の創業以来、「人々の暮らしを足元から支える企業」を理念として靴下を製造しています。
国内市場は十数年前から縮小傾向。同業他社が次々に淘汰されていきます。この過酷な競争を乗り切るべく、2005年に海外への進出を決断。当時まだ日本企業がほとんど進出していなかったベトナムに生産拠点として現地法人を築くことになります。
Y社様 システム開発責任者 Y様「当時はまだ多くの企業が中国に目を向けていました。ベトナムの進出はまったくのゼロスタート。苦労も多く、生産ラインが安定するまでに5年を要しました」
数々の困難を乗り越え、2010年ごろには生産ラインも安定。日本からの注文数も急増し、海外進出は大きな成功となりました。
しかし、この成功はベトナムの生産ラインに潜む課題を顕在化させていきました。
 「靴下は形状や編み方、素材など多くの品目に分かれている上に、ロット数の変動も大きく、生産管理が非常に大変です」(Y様) 
ベトナム工場での生産量が増えるとすぐに管理が追い付かなくなり、税関への申告、インボイスの不備など、さまざまなトラブルが発生するようになります。

海を越えて基幹システムを共有する?
Azureでの開発が解決へのカギに

この課題噴出の背景には、次のような要因がありました。

  1. あくまで別法人として、日本の本社とは別の、小規模なシステムで運用していた

  2. 原材料は船便で2ヶ月かけて調達。日本のように柔軟な対応が不可能だった

  3. 現地スタッフは入れ替わりが激しく、事務スキルが安定しなかった

  4. 「起毛」「転写」など生産バリエーションが増え続け、後工程も複雑化

人的な努力だけでは解決は難しく、「日本とベトナムを1つのY社ととらえてシステムを整備することが重要でした」(Y様)と考えるに至ります。
 そのためには海を越えて基幹システムを共有することが必要です。しかし、大企業のような投資は難しい。そこで、Azure(アジュール)での開発が浮上します。
Y社様はITパートナーであるA-ZiPとともに、日本とベトナムをセキュアにつなぐ生産管理システムを実現。2014年5月から活用を行っています。
このシステムはAccessとAzure SQL Databaseを活用し、A-ZiPがスクラッチで開発。多言語、多通貨に対応した汎用性の高いシステムに仕上がっています。「当社の事業規模でもこのようなシステムが実現したのは、AzureとA-ZiPのおかげ(笑)」(Y様)。

クラウドの費用対効果は?

クラウドの活用には毎年一定の利用コストがかかるため、累積するとオンプレミスでのシステム購入と変わらない金額になることも考えられますが、Y様は「それでもクラウド活用によるメリットの方が大きい」と断言します。

「第1に、ベトナムの工場にサーバーを設置して運用するのはリスクが高すぎます。
第2に、このままビジネスが成長し、現地のアライアンスパートナーまで弊社の生産管理システムに一元化するといった場合にも、クラウド化されていれば対応が容易です。
第3に、10年、30年といったスパンで考えれば、ベトナムから拠点を移している可能性もあります。将来の変化に、いかに迅速かつ低コストに対応できるか。それを考えればクラウド以外の選択肢はありません」(Y様)。

今回の開発にあたっては、日本をはじめ世界各地のAzureのデータセンターに対して、ベトナムからのレスポンスを計測したことにも注目です。理論値ではなく実測値を元に、香港リージョンのデータセンターを選択しています。開発をしながらこうした計測が行えることも、Azure利用のメリットと言えます。

新しい生産管理システムによって、原材料の在庫から生産の進捗、インボイスの発行から請求処理の状況まで、日本とリアルタイムに共有、把握できるようになりました。どこから遅れが生じても日本からピンポイントに指示が届くといったフォロー体制も整いました。

「日本とベトナムの間に一体感が生まれたことで、ベトナムのスタッフのモチベーションアップにもつながりました」(Y様)。

ベトナムにおける靴下の受注生産数量は、当初の400万足から今では1000万足に届く勢い。この成長を伸ばすべく、Y様はさらなるAzure活用も心に描いていると言います。

「今回のシステムで将来にわたって進化・適応していく力を得られました。しかもサーバーの老朽化やセキュリティの心配がありません。
今後は営業支援システムもクラウド上に移行させ、タブレットなどさまざまな端末からデータを入力、閲覧できる環境構築を考えています。そうなれば、営業の現場から製造ラインへの伝達にかかるタイムラグまで短縮できます。

クラウド活用によって今後のビジネスの可能性が大きく広がったと実感しています」(Y様)。